冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「晴臣さんも。和装も似合うけど、タキシードもかっこいいです」

 当初は洋装だけの予定だったのだが、百合と小夜子の熱烈な要望により披露宴では和装にお色直しをすることになっている。蝶子は白無垢、晴臣は黒の羽織袴だ。和装の試着はふたりで一緒に行ったので、互いにお披露目済みだった。

(袴姿を見たときは晴臣さんにはやっぱり和装!って思ったけど、洋装も負けてないなぁ)

 蝶子はうっとりと晴臣に見惚れている。

「どうしたんだ、それ」

 蝶子が手にしている日記帳に目を留めた晴臣が言う。

「お母さんが持ってきてくれたものです。……晴臣さんも見てくれますか?」

 蝶子は晴臣からも見えるようにしてさきほどのページを開く。そこに描かれているのは、男女のカップルだ。女の子は白いドレスを着て、大きなブーケを抱えている。

「これは……結婚式の絵か?」

 日記をのぞき込んだ晴臣の質問に、蝶子は照れくさそうに笑ってうなずく。

「子どもの頃の私が描いたものです。字が下手くそで恥ずかしいんですけど、ここ見てください」

 蝶子は指先で紙面をなぞる。女の子の絵の下には『ちょうこ』、そして新郎らしき男の子の下には『はるおみおにいちゃん』と書いてある。ページの右端には、小夜子の字で日付と『蝶子の将来の夢 晴臣くんと結婚』と説明書きがなされている。
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