冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 驚いたように蝶子の顔を見る晴臣に、蝶子はくすりと笑ってみせる。

「私、昔から晴臣さんに夢中だったみたいです」

 昔の晴臣のことはほとんど覚えていない。蝶子はそう思っていたのだが、小夜子と再会して以来、懐かしい記憶をたくさん取り戻していた。小夜子のいた頃の幸せだった日々はあえて思い出さないように蓋をしていただけで、忘れてしまったわけではなかった。

 六歳年上の晴臣が王子さまのように見えたこと、彼と会った日の夜はドキドキしてちっとも眠れなかったこと。

(あの頃から晴臣さんに恋をしていた。私が恋した相手はあとにも先にも晴臣さんただひとりだ)

 晴臣は極上に甘い笑みを浮かべて、蝶子の耳元に唇を寄せた。

「これからもっともっと夢中にさせる。永遠に離さないから、覚悟しておけよ」
「はい」

 晴臣はじっと蝶子を見つめながら、ゆっくりと顔を近づける。

「キ、キスはダメですよ。口紅が……」

 綺麗に仕上げてもらったばかりのメイクを気にする蝶子に、晴臣はにやりと悪戯な笑みを向ける。
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