冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 挙式のあとは、親族と親しい友人だけを招いたささやかな披露宴だ。

「わぁ~。綺麗だよ、蝶子」
「ありがとう、桃ちゃん」

 乾杯を終えると、すぐに高砂席に駆けつけてくれたのは桃子だ。フーシャピンクの華やかなパーティードレスは彼女によく似合っている。桃子のあとを追って、ネイビーのパンツスーツに身を包んだ真琴もやって来た。ドレス姿の蝶子に目を細め、優しく言葉をかける。

「おめでとう、蝶子。末永く、幸せにね」

 それから後ろを振り返り、あきれた顔で言う。

「ほら、いつまでもグズグズしてないで!」

 真琴が腕を引くのは、珍しくきちんとスーツを着た沙良だった。期限ギリギリまで出欠の返事を渋っていた沙良だったが、真琴が説得してくれたようだ。

「来てくれてありがとう、真琴! それから」

 蝶子は真琴から沙良へ視線を移す。

「吉永先生も。スーツ姿、素敵ですね」

 素直な感想を述べただけなのだが、隣の晴臣が露骨にむすっとした顔になったので蝶子は慌てて口をつぐむ。沙良はふんと鼻で笑うと、あきらかに晴臣を意識した様子で言い放つ。
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