冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 その夜は高級ホテルの最上階に部屋を取っていた。都心の夜景を見おろすスイートルームの、信じられないほど大きくふかふかのベッドに腰かけた蝶子は、指先でスマホの画面をスクロールする。

「今日の写真か?」

 シャワールームから出てきたバスローブ姿の晴臣が、蝶子の手元をのぞき込みながら隣に腰をおろす。

「はい。みんなが早速送ってくれて」

 式場のカメラマンが撮った写真が見られるのはだいぶ先の予定だが、最近のスマホやデジカメは性能がいいので、素人の写真でも十分に素敵だ。誓いのキス、フラワーシャワー、披露宴でのふたりの姿。どれも、とてもよく撮れている。
 蝶子はお腹に視線を落としながら口元を緩ませた。

「次はこの子を囲んで撮りたいですね」
「あぁ、そのときはうちにみんなを招いてパーティーをしよう」
「楽しみです! 早くその日にならないかな」

 お腹を撫でながらにこにこする蝶子に、晴臣は拗ねたような顔でぼやく。

「あいつは呼ばないからな」

 クールに見えてかなりのヤキモチ焼きな晴臣がいとおしくて、蝶子の胸はきゅんと鳴る。
 そのとき、蝶子の手のなかのスマホが振動して着信を知らせた。
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