冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
あの騒動のあと、観月製薬は倒産こそ免れたものの、大手製薬会社に買収されその傘下に入ることとなった。公平は社長をクビになり、買収元企業の人間が新しく社長に就任している。公平と紀香は離婚し、紀香は七緒を連れて実家に戻ったと聞いていたのだが……。
『それが……二度も出戻りなんてご近所に恥ずかしいっておばあちゃんに追い返されちゃって。今は古いアパートを借りて、ママとふたりで暮らしてる』
「大丈夫なの?」
蝶子は驚いた。生粋のお嬢さま育ちの紀香と七緒がふたりだけで生活しているなんて想像もできない。
『私だけはおばあちゃんの家で暮らしてもいいって言ってくれたけど、断ったの。アルバイトして、大学の勉強もちゃんとして……私も少しは努力してみる』
「そう」
いろいろあって、七緒も思うところがあったようだ。今までの彼女とはまるで別人のように頼もしくなっていた。七緒は意を決したように、真剣な声を発した。
『私がちゃんと自立できたら……そのときは、お姉ちゃんにごめんねって言ってもいいかな?』
「え?」
『反省してるし、後悔してる。許してもらえるとは思ってないけど……』
切実さのにじむ声から、七緒の気持ちは十分に伝わってくる。蝶子は穏やかに目を細めて答える。
「その日を楽しみに待ってる。がんばってね、七緒ちゃん」
別にその日が明日でも蝶子は構わないのだが、七緒が納得できる日まで待っていようと思った。
『それが……二度も出戻りなんてご近所に恥ずかしいっておばあちゃんに追い返されちゃって。今は古いアパートを借りて、ママとふたりで暮らしてる』
「大丈夫なの?」
蝶子は驚いた。生粋のお嬢さま育ちの紀香と七緒がふたりだけで生活しているなんて想像もできない。
『私だけはおばあちゃんの家で暮らしてもいいって言ってくれたけど、断ったの。アルバイトして、大学の勉強もちゃんとして……私も少しは努力してみる』
「そう」
いろいろあって、七緒も思うところがあったようだ。今までの彼女とはまるで別人のように頼もしくなっていた。七緒は意を決したように、真剣な声を発した。
『私がちゃんと自立できたら……そのときは、お姉ちゃんにごめんねって言ってもいいかな?』
「え?」
『反省してるし、後悔してる。許してもらえるとは思ってないけど……』
切実さのにじむ声から、七緒の気持ちは十分に伝わってくる。蝶子は穏やかに目を細めて答える。
「その日を楽しみに待ってる。がんばってね、七緒ちゃん」
別にその日が明日でも蝶子は構わないのだが、七緒が納得できる日まで待っていようと思った。