冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「じゃ、俺はこれで」
「は~い。今度はぜひゆっくりお話しましょうね」
七緒はころっと声音を変えて、晴臣に手を振っている。彼を乗せたタクシーが見えなくなると、七緒はくるりと蝶子に顔を向ける。
「あんなイケメンがお姉ちゃんの婚約者だなんて信じられない! ずるい」
七緒はぷぅと頬を膨らませて、蝶子を軽くにらみつける。
「ず、ずるいって言われても」
蝶子と晴臣の婚約はまだ、紀香と七緒が観月家に来る前に決まったことなのだ。だが、七緒はにんまりと笑うと蝶子に耳打ちする。
「ねぇ。あの人、七緒にちょうだい」
蝶子は一瞬、固まってしまい反応が遅れた。「えぇ?」と聞き返したときには、七緒は先に門を抜けて玄関へ向かっており、冗談なのか本気なのか真意を聞くことはできなかった。
蝶子の背中を冷や汗がつたう。
(ま、まさかよね)
必死にそう思おうとしても、胸の奥でなにかが燻る。ジリジリと焦げつくように蝶子を急き立てた。
「は~い。今度はぜひゆっくりお話しましょうね」
七緒はころっと声音を変えて、晴臣に手を振っている。彼を乗せたタクシーが見えなくなると、七緒はくるりと蝶子に顔を向ける。
「あんなイケメンがお姉ちゃんの婚約者だなんて信じられない! ずるい」
七緒はぷぅと頬を膨らませて、蝶子を軽くにらみつける。
「ず、ずるいって言われても」
蝶子と晴臣の婚約はまだ、紀香と七緒が観月家に来る前に決まったことなのだ。だが、七緒はにんまりと笑うと蝶子に耳打ちする。
「ねぇ。あの人、七緒にちょうだい」
蝶子は一瞬、固まってしまい反応が遅れた。「えぇ?」と聞き返したときには、七緒は先に門を抜けて玄関へ向かっており、冗談なのか本気なのか真意を聞くことはできなかった。
蝶子の背中を冷や汗がつたう。
(ま、まさかよね)
必死にそう思おうとしても、胸の奥でなにかが燻る。ジリジリと焦げつくように蝶子を急き立てた。