冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
気楽に話せるようにとの先方の気遣いで、今日は双方とも当主は不在だ。観月家は紀香と七緒と蝶子、有馬家は晴臣と母である百合が来ているはずだ。案内された部屋に入ると、すでに晴臣たちが待っていた。
「まぁ、蝶子ちゃん! すっかり綺麗になって」
椅子から立ちあがった百合は、まっさきに蝶子に声をかける。晴臣は蝶子の記憶にあった彼とはすっかり別人になっていたが、百合はあまり変わっていない。あいかわらず若々しく美人で、藤色の着物がよく似合っている。
「ご無沙汰しております、百合おばさま」
蝶子はそう百合にあいさつをすると、すぐに場を紀香に譲った。本当は百合と話がしかたったが、今日の主役は蝶子ではない。
『わきまえなければ』いけないのだ。
紀香が百合に話しかける。
「お久しぶりです、有島さん。七緒は……おそらく初めてでしたよね」
「えぇ。蝶子ちゃんの妹さんね」
紀香が百合と晴臣に七緒を紹介する。晴臣は着物姿の七緒と地味なワンピースの蝶子を見比べて、いぶかしげな表情になる。なにか問いつめるような目で蝶子を見るが、蝶子はそれに答えることはできなかった。
最初は互いの近況報告などで、場は和やかに進んだ。だが、じっと蝶子を見据えていた晴臣が放った言葉で少し空気が変わる。
「蝶子さんは着物でないんですね。よく似合うのに」
「あ……はい、今日は」
「まぁ、蝶子ちゃん! すっかり綺麗になって」
椅子から立ちあがった百合は、まっさきに蝶子に声をかける。晴臣は蝶子の記憶にあった彼とはすっかり別人になっていたが、百合はあまり変わっていない。あいかわらず若々しく美人で、藤色の着物がよく似合っている。
「ご無沙汰しております、百合おばさま」
蝶子はそう百合にあいさつをすると、すぐに場を紀香に譲った。本当は百合と話がしかたったが、今日の主役は蝶子ではない。
『わきまえなければ』いけないのだ。
紀香が百合に話しかける。
「お久しぶりです、有島さん。七緒は……おそらく初めてでしたよね」
「えぇ。蝶子ちゃんの妹さんね」
紀香が百合と晴臣に七緒を紹介する。晴臣は着物姿の七緒と地味なワンピースの蝶子を見比べて、いぶかしげな表情になる。なにか問いつめるような目で蝶子を見るが、蝶子はそれに答えることはできなかった。
最初は互いの近況報告などで、場は和やかに進んだ。だが、じっと蝶子を見据えていた晴臣が放った言葉で少し空気が変わる。
「蝶子さんは着物でないんですね。よく似合うのに」
「あ……はい、今日は」