冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
晴臣は無表情のまま答えない。美しい瞳が見据えているのは、正面に座る七緒ではなくその隣の蝶子だ。蝶子は晴臣からの視線を痛いほどに感じていたが、彼の顔を見ることはできなかった。
気遣うような口調で百合が蝶子に声をかける。
「まず……蝶子ちゃんは納得していることなの?」
蝶子の心にほんの一瞬迷いが生じた。
(もし正直に嫌だと言ったら……私が晴臣さんと結婚したい。そう言えたらなにか変わるかな?)
だが、考えた結果、そんな迷いはすぐに消えた。変わるはずがない。紀香と七緒に、蝶子の願いが届いたことなどこれまで一度もなかった。いつだって打ち砕かれ、あざ笑われるばかりだった。希望を口にすることをやめた蝶子は、いつしか願うことすら諦めるようになっていた。
蝶子は曖昧な笑みを浮かべて百合を見返すと、こくりと小さくうなずく。感情を失った抑揚のない声で言う。
「はい。私に異存はありません」
それを聞いた晴臣はすっと椅子から腰を浮かせ、大きなテーブルの横をぐるりと回ってツカツカと蝶子のもとに歩いてきた。彼女の前で足を止め、おびえた顔をしている蝶子を見おろす。
気遣うような口調で百合が蝶子に声をかける。
「まず……蝶子ちゃんは納得していることなの?」
蝶子の心にほんの一瞬迷いが生じた。
(もし正直に嫌だと言ったら……私が晴臣さんと結婚したい。そう言えたらなにか変わるかな?)
だが、考えた結果、そんな迷いはすぐに消えた。変わるはずがない。紀香と七緒に、蝶子の願いが届いたことなどこれまで一度もなかった。いつだって打ち砕かれ、あざ笑われるばかりだった。希望を口にすることをやめた蝶子は、いつしか願うことすら諦めるようになっていた。
蝶子は曖昧な笑みを浮かべて百合を見返すと、こくりと小さくうなずく。感情を失った抑揚のない声で言う。
「はい。私に異存はありません」
それを聞いた晴臣はすっと椅子から腰を浮かせ、大きなテーブルの横をぐるりと回ってツカツカと蝶子のもとに歩いてきた。彼女の前で足を止め、おびえた顔をしている蝶子を見おろす。