冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「彼は文学には造詣が深いから、君はきっと気に入るんじゃないかな」
ドーム型の建物はそう大きくはないが、二階まで吹き抜けになっているので解放感がある。壁面すべてが書架になっており、三百六十度ぐるりと本に囲まれている。蔵書に新刊はほとんどなく、古典や稀覯本が中心のようだ。晴臣の言うとおり、蝶子にとっては心躍る空間だった。
「これはいつ頃の作品だ?」
「十九世紀ですね。その時期のフランスでは恋愛小説の名作がたくさん生まれたんですよ。不倫や夫婦間の悩みなど、今の作品として出版されてもおかしくないものばかりです」
「人間の悩みは古代からそう変わらないとはよく聞く話だな」
「ですね」
目についた本をパラパラとめくったり、蝶子が詳しいものは解説をくわえたり、そんなふうにして一緒に時間を過ごした。これまで、わりとかしこまったデートしかしたことがなかったので、新鮮でとても楽しい。ずいぶん長い時間図書館にいたので、外に出たらすっかり日が傾いていた。
「腹が減ったな。どこかでなにか食べようか」
「はい」
蝶子は晴臣にほほ笑み返す。
ドーム型の建物はそう大きくはないが、二階まで吹き抜けになっているので解放感がある。壁面すべてが書架になっており、三百六十度ぐるりと本に囲まれている。蔵書に新刊はほとんどなく、古典や稀覯本が中心のようだ。晴臣の言うとおり、蝶子にとっては心躍る空間だった。
「これはいつ頃の作品だ?」
「十九世紀ですね。その時期のフランスでは恋愛小説の名作がたくさん生まれたんですよ。不倫や夫婦間の悩みなど、今の作品として出版されてもおかしくないものばかりです」
「人間の悩みは古代からそう変わらないとはよく聞く話だな」
「ですね」
目についた本をパラパラとめくったり、蝶子が詳しいものは解説をくわえたり、そんなふうにして一緒に時間を過ごした。これまで、わりとかしこまったデートしかしたことがなかったので、新鮮でとても楽しい。ずいぶん長い時間図書館にいたので、外に出たらすっかり日が傾いていた。
「腹が減ったな。どこかでなにか食べようか」
「はい」
蝶子は晴臣にほほ笑み返す。