冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 晴臣が自分を妻に望んでいるだなんて、都合のよい夢を見ているだけなんじゃないかと、不安になる。ちっとも実感がわかない。
 だが、目の前の晴臣は色気たっぷりの表情で蝶子が予想もしていなかった台詞を次々と口にするのだ。晴臣は顔を寄せ、甘く艶のある声でささやく。

「添い寝で終わらせるつもりはないぞ」

 羞恥心のあまり蝶子は言葉を詰まらせた。いくら世間知らずの蝶子でも男女が一緒に眠ることの意味くらいは知っている。ただ、それが自分の身に起こるかもしれないという想像力は足りていなかった。

「やっ、えっと、その」

 蝶子の口から出るのは意味をなさない言葉ばかりだ。

「なにも知らない無垢なままでいられては困る。――手ほどきをしようか」

 頭が真っ白になり、身体を硬直させている蝶子とは対照的に晴臣は冷静だ。柔らかく笑みながら、蝶子の背中を指先でなぞる。

「俺は今、無性に君を欲しいと思っている。君は嫌か?」

 蝶子の顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。晴臣の言葉はいつもストレートで、蝶子を甘く翻弄する。蝶子はうつむき、パジャマのストライプ柄を穴が開くほどじっと見つめた。

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