冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
食事を終えたら紀香の待つ家に帰ることになるのだと思うと、蝶子の胸はずしりと重くなったが、あえて考えないことにした。
(もう少しだけ、晴臣さんとの時間を楽しみたい)
晴臣が連れてきてくれたのは落ち着いたビストロで、カウンターに並んで座った。いつもの高級店とは違う距離の近さに、蝶子の心臓はドキドキとうるさく騒ぐ。
南仏の家庭料理を少し和風にアレンジしているという料理はどれもおいしく、お酒もすすむ。いいペースでグラスを空ける蝶子に、晴臣は目を見はる。
「酒が強いのは意外だな」
「あっ……実は結構好きで」
はしたないだろうかと思いつつも、蝶子は正直に答える。これまで彼と訪れた店はコース料理が中心でお酒のペースも決まっているようなものだったので、彼は蝶子がいける口だと気がついていなかったのだろう。
「晴臣さんは?」
蝶子が聞くと、晴臣はふっと表情を緩ませた。
「酒は好きだが、そんなに強くはない。君のほうが強いかもな」
彼の醸し出す空気が前よりずっと柔らかくなったように感じる。
(打ち解けられた、と思うのは自惚れすぎかな?)
ふいに会話が途切れると、晴臣はまっすぐに蝶子の目を見つめた。落ち着いた声でゆっくりと話し出す。
(もう少しだけ、晴臣さんとの時間を楽しみたい)
晴臣が連れてきてくれたのは落ち着いたビストロで、カウンターに並んで座った。いつもの高級店とは違う距離の近さに、蝶子の心臓はドキドキとうるさく騒ぐ。
南仏の家庭料理を少し和風にアレンジしているという料理はどれもおいしく、お酒もすすむ。いいペースでグラスを空ける蝶子に、晴臣は目を見はる。
「酒が強いのは意外だな」
「あっ……実は結構好きで」
はしたないだろうかと思いつつも、蝶子は正直に答える。これまで彼と訪れた店はコース料理が中心でお酒のペースも決まっているようなものだったので、彼は蝶子がいける口だと気がついていなかったのだろう。
「晴臣さんは?」
蝶子が聞くと、晴臣はふっと表情を緩ませた。
「酒は好きだが、そんなに強くはない。君のほうが強いかもな」
彼の醸し出す空気が前よりずっと柔らかくなったように感じる。
(打ち解けられた、と思うのは自惚れすぎかな?)
ふいに会話が途切れると、晴臣はまっすぐに蝶子の目を見つめた。落ち着いた声でゆっくりと話し出す。