冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「もう聞いてしまったから、今さら撤回はさせない」

 ごくりと息をのむほど、艶っぽく煽情的な表情で彼は蝶子を見据える。

「ふたりのベッドを買いにいこう」

 手を繋いだまま、ふたりはさきほどの店へと引き返す。蝶子の心臓は破裂しそうなほどバクバクと鳴っていて、息苦しさを覚えるほどだ。晴臣がぼやくようになにか言ったが、聞き逃してしまい蝶子はもう一度言ってもらうよう頼んだ。すると晴臣は、くすりと小さく笑みをこぼす。

「ずるいのは君のほうだと言った」
「え?」
「かわいい嫉妬に涙、想定外の大胆な発言。俺をためそうとしているとしか思えない」
「えっと……それはどういう意味で?」

 蝶子には晴臣をためしている自覚などまったくない。晴臣はぐっと蝶子との距離を詰め、鼻先がぶつかるほどの至近距離で低くささやく。

「言っておくが、俺はそう我慢強いほうじゃないぞ」

 晴臣の言いたいことはさっぱりわからないが、彼の色香に酔わされ、蝶子の鼓動はまたスピードをあげ爆発寸前にまで達していた。
 

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