冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
『耳の不自由な奥さんよりー―』
いつか七緒に言われた台詞がぐるぐると蝶子の頭を回る。長い間、紀香と七緒にちくりちくりと傷つけられてきたことで、蝶子は自分の左耳に必要以上のコンプレックスを抱くようになっていた。真琴や桃子以外の人間には打ち明けていない。正直に言わないせいで、『無視された』とか『気取っている』などと誤解されてしまうこともあるのに、それでも勇気が出ずにごまかし続けてきた。
晴臣の前でも同じだ。時折聞き取れない言葉があっても、曖昧に受け流してその場だけ取り繕ってしまっている。
それではダメだと思いつつも、今また、同じことをしようとしている。
「蝶子はどう思う?」
「あっ、そうですね。えっと……」
視線が泳いでしまう。どうしていいかわからず、言葉が続かない。
いつか七緒に言われた台詞がぐるぐると蝶子の頭を回る。長い間、紀香と七緒にちくりちくりと傷つけられてきたことで、蝶子は自分の左耳に必要以上のコンプレックスを抱くようになっていた。真琴や桃子以外の人間には打ち明けていない。正直に言わないせいで、『無視された』とか『気取っている』などと誤解されてしまうこともあるのに、それでも勇気が出ずにごまかし続けてきた。
晴臣の前でも同じだ。時折聞き取れない言葉があっても、曖昧に受け流してその場だけ取り繕ってしまっている。
それではダメだと思いつつも、今また、同じことをしようとしている。
「蝶子はどう思う?」
「あっ、そうですね。えっと……」
視線が泳いでしまう。どうしていいかわからず、言葉が続かない。