約束の指にキスして。
『寝てもねーんだろ。寝ろ。』

そう言って、アタシの背中を擦る。

『大丈夫。大丈夫だから……安心して寝ろ。瑛梨……』

呪文のように、唱えられ、背中を擦られて、何故かアタシの心は安らぎ、急に瞼が重くなった。

そして、夢に墜ちる。

今も1人、体育館で練習している桔平がいた。

ただひたすらに。がむしゃらに。

アタシは体育館の隅っこでただ見ていた。

何も出来ない自分に、劣等感を感じながら……。

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