約束の指にキスして。
そうだよな。
わかってるんだ。
瑛梨は。

いつも、俺達を見ててくれる。

俺達を。

俺さえも。



『……好きだよ。』

そう小さく呟いても、瑛梨には聞こえない。
小さな体を屈めて、カサブランカを集めている。

ね、きっと瑛梨は、その腕いっぱいに花を抱えて、俺に言うんだろうね。

『ありがとぉ、嬉しい。花も、来てくれたことも。』

って。


聞けよ、ばか女。

俺がこんなに好きなのに……。

『健司?』

その小さな背中を抱き締める。
少しだけ、このままでいさせて。
瑛梨。

俺の中から、嫌な物が出ていくまで……。

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