約束の指にキスして。
恥ずかしくて、顔を見られたくなくて健司に近寄ると、キッペーがベッドにジャンプして、アタシと健司の間に入りこんだ。

『キッペー。』

『桔平?』

『アゥン?』


自分の定位置なんだから当たり前だ、と言うように、アタシにすりよってくる。仕方なく健司が少しだけ間を開けると、キッペーは満足そうに舌をだした。

『こいつキッペーって言うの?』
『うん。一回キッペーって呼んだらキッペーにしか反応しなくなっちゃって。』

『ふうん…』

健司がお腹を撫でてやると、仰向けになって、前足をバタバタさせるキッペー。
楽しそうに遊ぶ健司は、無邪気な子供の顔はどこにもなく、すっかり大人になってしまったことに気付いた。
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