約束の指にキスして。
アタシじゃない女の子に桔平が優しく触れているのを想像して、涙して。

でも幸せでいてくれるならそれでいいと思った。

なのに…

『桔平!』

『ワンッ!』

外に飛び出して、キッペーの後を追う。
家の広い中庭。
隅の方に歩くキッペーについて行くと、なんの跡もないはずの純白の絨毯に、馬鹿みたいにでっかい足跡が点々と残されていた。

『桔平…?』

『クゥーン………』

嘘だ。

こんなの。

桔平がいるはずない。

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