約束の指にキスして。
芽生えかけた期待のクローバーは、匡ちゃんの言葉に地中ふかくに潜ってしまった。

変なの。
アタシ。
桔平に会わせる顔もないくせに、桔平がいるかもって分かった途端、心が騒ぐ。

『ね、おいで、瑛梨。お土産があるんだ。』

もとに戻った匡ちゃんが、アタシを手招きする。
アタシは、その手を掴んで匡ちゃんの元へ寄った。

『アンッ!アンッ、アンッ!グルル…』

『キッペー?』

匡ちゃんの足元で吠えたてるキッペー。普段見せない姿に、アタシはキッペーの背中に手を這わせた。
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