約束の指にキスして。
『お前そんな事…。馬鹿。本当、俺よりばか。』

『馬鹿ばかっていわないでょ…』

『馬鹿だよ瑛梨は。』

桔平の胸元に、固い感触を感じる。首から覗く、革ひもに通った指輪。

…アタシが最後にあげた、桔平への誕生日プレゼントだった。


『俺にとって、瑛梨はなにものにも変えられない存在なんだよ。
なにも返してくれなくていい。
側に居てくれるだけで良いんだ。
瑛梨が、俺の幸せなんだから。』
優しい桔平の手が、アタシの頭を撫でる。

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