約束の指にキスして。
『んで。毎晩瑛梨と愛しあって、可愛い赤ちゃん産んでもらって。パパになって。すっげぇ可愛がって育てんの。
娘なら俺、可愛がり過ぎて嫁にやれないかも。
んでな?最後の最後。
死ぬ時は瑛梨に看取ってもらうんだ。最後に、《ありがとう。世界一愛してるよ。》って言いながら逝く。世界一素敵な人生プランだろ?』

『馬鹿…』

アタシから離れていくくせに、何で今そんな事言うの?

ねぇ…アタシだって好きだよ。
桔平。

行かないでよ。

行かないで…。


『………幸せになれよ。』

そっと、アタシの肩から手を離す桔平。
一瞬で、窓の外に消えていった。
『待って!』

桔平が立ち止まる。
アタシは…精一杯明るく振る舞った。

『アタシ…強くなったよ。あんまり泣かなくなったし、もうご飯も吐かない。人とも、少しなら話せるようになったんだ。だから……もう心配しなくて良いよ。』


桔平は、アタシに背を向けたまま、ヒラリと手を降った。

そして、そのまま闇夜に消えて行った。

『幸せになってね…』

呟いてみる。
そんなの……
< 372 / 526 >

この作品をシェア

pagetop