約束の指にキスして。
桔平の服の裾を掴む手が震える。聞いてしまった。
聞きたくなくて、ずっと我慢してたのに。

桔平の温もりで、言葉で、私は桔平に世界で一番愛されてるんだって自負できた。

言葉にされてなくても。

婚約者の人より、私を愛してくれてるって…


でも怖くて聞けなかった。

もし違うって言われたら?
言われてしまったら…

私は…

『お前、婚約者のヤツに愛情とか、そんなん微塵もないの?』

『…』

『なんとか言えよ!』

健司がボールを落とす。
桔平はそっと私の耳に手のひらを被せて、健司に向き直った。
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