約束の指にキスして。
『健司…』

『…何か頭痛くなってきた。俺行くわ。』

ヒラリと手をふると、健司は走って行ってしまった。
やがて健司は角を曲がって消えていって…
また二人だけの時間に戻った。

『…行くか。』

『…ぅん。』

二人の時計が動き出す。
ゆっくりとした時。
散り行く花びらが、私たちの体を包むように降り注いでいく。

『あのさ…』

『ん?』

『《このまま》がいい。』

桔平は私の手をギュッと握った。
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