約束の指にキスして。
桔平に溺れ、背中に手を這わせた時、右耳に僅かな痛みが走った。

──パチン。


『!』

驚きと同時に、桔平の眉が少しだけ歪んだ。
驚いて桔平の唇を少しだけ噛んでしまったのだ。

『ごめ…桔平。』

『大丈夫だって。気にすんな。』

『あ。』

少しだけ血の滲んだ桔平の唇。
それをみて眉を垂らしていた私の耳に、消毒液を含ませたコットンをあてる桔平。

桔平は私に穴開けを握らせて、私に背を向けた。

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