約束の指にキスして。
桔平が今までいたベッドに残る温もりを感じながら、叩かれてジリッとした手を握りしめる。

『桔平…』

桔平は私を振り返らない。

『桔平。セックスは禁じたはずよ。どういうこと?』

『………』

黒髪の、キツい目の女の人が私をギロリと睨む。
そのうしろに………鍵を手にした匡ちゃんがいた。

『黙りなんていい度胸してるわ…でもそんな所も好きよ、桔平。』
女の人の真っ赤なルージュがひかれた唇が、桔平の唇に重なる。

『嘘…』

桔平は身動ぎ1つしない。
さっきまで…あの唇は私の唇と重なっていたのに………。

< 456 / 526 >

この作品をシェア

pagetop