約束の指にキスして。
優しい声が、私をゆり起こす。
手が、手が沢山延びてきて私を追いかける。
嫌と言えずにだだ犯され続ける自分。

そんな夢から、優しい声は私を抱き起こした。

『瑛梨、大丈夫か?』

健司が私の背中を優しくさすってくれている。びっしょりと濡れたシャツとパジャマを抱き締めて、私は夢の余韻から抜け出せずにいた。

『シャワー、浴びるか?』

こくりと頷く私の肩を抱いて、健司は立ち上がる。

シャワーを浴びながら、小さくうずくまる。私は…何のために生まれて来たの?

今まで私のこの身体を、愛して抱いてくれた人は…いなかった。

誰もがそれぞれ、欲望や嘘や、そんなのに取りつかれていて、私はその道具にされていただけ。

だとしたら…一体…何のために?
私は、生まれて来たの……?
< 478 / 526 >

この作品をシェア

pagetop