約束の指にキスして。
「アンアンっ!」

「キャンっ!」

足元を駆け回るキッペーとエリを踏みつけないように、リビングへと向かう。
健司は笑顔で私を迎え入れた後、ダイニングテーブルに座らせた。

「今朝は怖い夢でも見たのか?すげぇうなされてた。」

お皿を並べてから、健司は私の頭を優しく撫でる。
怖い夢……??
夢なんかじゃない。
過去にあった事実。
過去の記憶だ。

「今日は大学行ってー、その後はリョウにいん所にでも行くか??最近、バーでバイト始めたらしいじゃん。からかいに行こうぜ。」

クスクスと笑う健司に歩みよって、後から抱きつく。
今、私の心が落ち着くのはここしかない。健司は、私を暖かく大きく迎えてくれる唯一の人だから…

「瑛梨…どうした?」

「健司…」

私の頭を優しく撫でる、健司の手がピクリと反応した。
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