約束の指にキスして。
『瑛梨、髪結んでんの?』

桔平に呆れていると、健司がアタシの髪を引っ張った。
二本結びの髪が、肩の上でぴょんぴょん跳ねている。

『ぅん。だって、走ってるとき髪の毛口に入ってヤなんだもん。首にくっつくし。』

『へぇ。』

そう言って、健司は髪を離さない。健司は、アタシの髪を少し引っ張って、アタシを近くに寄せた。
『俺、結んでる方が好きかも。可愛い。』

そう言って耳元で呟く。

突然耳元で囁かれた低く甘い声に、びっくりして躓きかけたアタシの腕を、両脇から捕まれて支えられた。
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