約束の指にキスして。
『嫌だったんだ?』

『……。』

『何で我慢してんの?わかんだよ、俺には。すっげぇ肩震えてるし、涙目だし。』

桔平がアタシの背中をさする。
そうされると、今まで我慢してた嫌悪感や不快感が、不思議にいっきに促されて溢れ出してきた。

『…ちょっとごめん。』

そう言って立ち上がり、女子トイレに駆け込んで蛇口を捻る。

暫く吐いて、少し楽になると、背中をさする暖かい手が置かれている事に気付いた。

『…ごめんな、一人にして。』

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