約束の指にキスして。
『お願い、健司。桔平にはこのこと言わないで??』

無言で桑原を追い払った後、瑛梨は目一杯背伸びして、俺の耳元で呟いた。

『お前さぁ、桑原平気なの?』

『分かんない…いつの間にか頷いてた。』

それって平気って事じゃねーのかよ。
ちらりと瑛梨の方を見ると、心配そうな顔をして上目遣いで俺を見ていた。
それプラス涙目。
威力が半端ねぇ。

『分かったから。そんな顔すんな。』

そう言って頭を撫でると、瑛梨はホッとした顔で笑った。
< 99 / 526 >

この作品をシェア

pagetop