月夜に笑った悪魔 (番外編)
近づいてくる足音。
やがてすぐ近くでとまり、柱の横から1人の男性が現れひどく冷たい目で私を見下ろした。
片手には拳銃。
でもそれは向けられることなく、伸びてきた手。
私は逃げようと走り出そうとしたけど腕をつかんで制される。
痛いくらい強くつかまれた腕。
強く引っ張られて、その力で体が動き……。
途中で立ちどまることもできず、私はプールへと落ちた。
あがる水しぶき。
大きな音。
すぐに水面から顔を出すが、動けない。
「お前は俺がぶっ殺す……!」
向けられた拳銃。
私にはもう攻撃できるものもなにもない。
まさに、絶体絶命。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……!
必死に考えるけどもうなにも思いつかない。
やばい、このままじゃ本当に死──……
そう思った時に聞こえてきたのは銃声。
ガシャン、と音を立てて目の前の男性が持っていた拳銃が床に落ちた。