月夜に笑った悪魔 (番外編)
廊下を走って階段を下り。
2階に行ったところで「美鈴じゃん」と聞こえてきた声。
その声は女の子の声で、聞き覚えがあった。
ピタリと足をとめて声のしたほうへと目を向ければ、そこにいたのは瀧本由美。
由美は前に友だちだった子で、私の元カレ……和正から頼まれて私のよくない噂を流した子。
彼女がしたことを知って、もちろん怒りはあった。
でも、もう関わりたくないという気持ちのほうが強かったから関わらずに過ごしていたのだけど……。
由美は自分のしたことなど忘れたようにこっちに近づいてくる。
そして、彼女は私の手元に目を落とし
「あ、一条様のじゃん」
持っていたジャージに気づいた。