月夜に笑った悪魔 (番外編)


悲しい気持ちはあったが私は「ぜんぜん大丈夫」と返す。



「美鈴はなんか用事?」
「あ、うん」


「そこ座れば」


座布団を持って来てくれて、座るように促される。
私はそこに座って、口を開いた。



「暁。あのね、私、バイトしたいと思ってるんだけど……」
「なんか欲しいものでもあんの?買ってやるから言えよ」


すぐに返される言葉。


「いや、欲しいものは特にない……」
「じゃあ別にやんなくていいだろ」


「お世話になってるこの家にお金を入れたいの。ほら、私って一条組にはいろいろしてもらってばかりだし」
「おまえが思ってるより、一条組に金はあるから」



だからおまえが気にすることじゃねぇ、と付け足されて話を終わらせようとする彼。
立ち上がろうとするから、私は彼の袖をつかんで引きとめた。

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