月夜に笑った悪魔 (番外編)
合わせてくれない目。
窓に寄りかかって目を瞑っているから、彼は寝てるのかも。
私は彼の隣に座って、できるだけ音を立てないように車のドアを閉めた。
春樹さんか運転席に座り、発信する車。
私は窓の外を見ていたけど、気になって暁に目を向ける。
彼は目を瞑ったまま。
じっと見ていてもその瞼が上がることはない。
暁が言ったことは許せない。
すごくムカつく。
けど……寂しいな。
こんなに近くにいるのに目も合わさない、少しも話さない、っていうのはすごく寂しい。
ムカつくけど、暁が好きな気持ちは少しも変わらない。
変わるわけない。
「…………」
寂しさは消えず、私は暁へと手を伸ばしてぎゅっと強く手を握っていた。