月夜に笑った悪魔 (番外編)


「雪道混んでて遅れた。待たせて悪かったな」


行こ、と差し出された手。
お礼を言ってからその手につかまると、伝わる冷たさ。



手袋をしてない彼の手は氷のように冷たい。
そして、冷たくなりすぎて手が赤い。



ぱっと見ると、駐車場にとまっていたバイク。
それは、暁のバイクだ。


……バイクで来たら、そりゃあ手が冷たくなるわ。


「マフラー返す……!」


立ち上がって、すぐにはずそうとしたマフラー。
でも、彼は「おまえがしてろ」と私の手を制す。


「暁、風邪ひくよ!?」
「俺は風邪ひかねぇよ。そんな体弱くねぇし」



早く行くぞ、と手を引っ張られ……。
ヘルメットを被せられたあとはバイクに乗せられて、マフラーを返す間もなくバイクは走り出す。


風邪ひいても知らないから、と心の中で私はつぶやいた。


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