月夜に笑った悪魔 (番外編)


唇は離れ、手を引かれてエレベーターをおりていく。



乱れた息。
顔が熱くて下を向いてただ足を動かす。


立ちどまったのは、ある部屋の前。
暁の、マンションの部屋。



彼は鍵を開けると私を押し込んで。
彼も中へと入るとドアが閉まり、自動でガチャンと鍵が閉まる。



「ちょっ……ちょっと待って、」


彼が靴を脱いであがると、私の手をまた引っ張るから慌ててとめた。


私はまだ靴を脱いでない。
このままじゃ靴を履いたまま部屋にあがっちゃう。



彼は足をとめて“早くしろ”とでも言いたそうな目を向ける。


……ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃんか。
なんでそんなに急ぐのさ……。



すぐに靴を脱いで部屋へとあがれば、靴を揃える間もなく手を引かれた。

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