月夜に笑った悪魔 (番外編)
「1回だけ、いい?」
キャミソールに触れようとしていた手の力が弱まって、上から降ってくる声。
「…………」
「今日は超トクベツに1時間だけ勉強教えてやるから」
「……2時間」
私は彼とちゃんと目を合わせて、小さくつぶやいた。
暁の勉強の教え方はものすごく上手。
わかりやすくて、だいたい1回の説明で問題の解き方を理解できるほど。
自分で勉強すると解き方を調べたりで1問解くのにものすごい時間がかかってしまうから、たくさん教えてもらいたかった。
「わかったって」
ふっ、と笑う彼。
つかんでいた手をそっと離せば、指を絡めて強く手を握る。
「あかつき……、お風呂は……」
「それまでガマンできない。どうせ汗かくし、したあと一緒に入ろ」
「……うん」
小さくうなずくと落ちてくる影。
私はゆっくり目を閉じて、落ちてくる唇を大事に受けとめた。