月夜に笑った悪魔 (番外編)
after story12
「暁、すまん。ちょっといいか」
襖を開けて、暁を呼んだ暮人さん。
今から登校するところだったけど、私たちはピタリと足をとめた。
「先行ってろ」
暁とつないだ手がぱっと離される。
昨日の朝も、一昨日の朝も、その前の朝も暁は暮人さんと話してた。
なんの話をしてるのかはわからないけど、いつも長く話は続いている。
だから私は暁より先に学校に行っていて、今日は久しぶりに一緒に行けるかと思ったんだけど……無理だったみたい。
シゴトの話、してるのかな。
……それだったら仕方ないか。
「うん。じゃあね」
暁に軽く手を振ってから、私は靴を履く。
外へと行こうとした時に、ぐいっと手を引っ張られ──。
彼のほうに引き寄せられると、目の前にできた影。
唇に伝わる熱。
「忘れもん」
唇に熱が伝わったのは一瞬。
彼は私から離れて口角を上げる。