月夜に笑った悪魔 (番外編)


大きな手が髪に触れて、横髪を耳にかける。


「な、なに……?」


そう聞くのと同時、耳たぶに触れられなにかをつけられた。
右につけられたと思ったら、左にも。


つけられたものに触れてみれば、それは……イヤリング。
見えないけれど触れてわかったのは、それはきっと花形だということ。



「これははずしとけ」


次に彼が手を伸ばしたのは、私が手首にしていたバングル。
それをはずすと、彼は自分のポケットの中へ。




一瞬にして蘇る記憶。
以前の、クラブの潜入捜査の前のこと。


あの時も……同じようにこうしてバングルをはずされたっけ。



「…………」


押し寄せる不安。
私は、きゅっと彼の袖を掴んだ。

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