月夜に笑った悪魔 (番外編)
私は視線を落とした。
見たのは自分の手首。
暁がさっきなにかをつけていると思ったけど……右手首についていたのは、ピンクと白の刺繍糸で作られたもの。
これはさっき暁が私につけたもの、私が小学生の時に作って暁にあげた──ミサンガ。
……これ、持ってきてたんだ。
暁、いつまでも大切にしてくれてありがとう……。
暁が無事でありますように。
いなくなりませんように。
壁によりかかりながら私は強く祈る。
動けない私は祈ることしかできない。
さらに下がっていく体温。
舌も痺れてもうなにも話せそうにない。
私の意志に反して、ゆっくりおりていく瞼。
諦めちゃだめだ。
諦めちゃ……。
目を瞑ったら、もう目を開けられなくなる気がして必死に抗う。