月夜に笑った悪魔 (番外編)
トイレへと行って用を達したあと。
ある人物が目に入って、「あっ」と声が出た。
右足、それと手のひらから腕にかけてギプスをはめて、松葉杖をついてる人物。
入院着を着たその人物は──暁だった。
ばちっと目が合って、動きを停止。
今すぐにでも彼の胸に飛び込んでいきたかったけど……できなかった。
最初になんて言おう。
暁は、私に解毒剤を持ってきて飲ませてくれた命の恩人。
あともう少し遅かったら私は助からなかったかもとお医者さんから聞いた。
解毒剤のお礼から言えばいいのか、それとも勝手なことしてごめんと謝るべきか……。
言いたいことが多すぎて、「へへっ」と気持ち悪い笑いが漏れた。