月夜に笑った悪魔 (番外編)


思い出したのは彼の足首の色。
ひどい色になって腫れてたから、あれは高確率で骨折してるのに……松葉杖を使わないなんて悪化しちゃうんじゃ!?




「暁、松葉杖──っ」



心配で声を出した時には彼は走って。
一気に距離を詰められて、強く抱きしめられた。



背中にまわっている彼の左手。
鼻腔に届く暁のいい匂い。


感じる体温。


彼の腕の中で自然と涙が溢れた。





「ごめん……。ごめんなさ……っ」


嗚咽混じりに出る声。


「勝手なことしてごめんなさい……。心配かけてごめんなさい……」
「……いい。全部許すから、俺のそばにいろ。もう絶対離れんな」


彼の声が耳元で聞こえてくる。
私を抱きしめる彼の手の力がさらに強くなるのを感じた。


< 363 / 382 >

この作品をシェア

pagetop