月夜に笑った悪魔 (番外編)


「約束する……っ」


私も彼の背中に手をまわす。


強く抱きしめ返して……あとから思い出したこと。

一瞬忘れかけてたけど、暁は松葉杖ついてないんだって。




「……暁」
「…………」


「暁、」
「…………」


呼んでも無反応。
腕を解いて彼を押すがちっとも離れない。



「暁、松葉杖つかないと足が悪化しちゃう……」
「……こんくらいへーき。おまえはすぐ離れてんじゃねぇ」


やっぱり暁は私を離す気配はなし。



なにも平気じゃないと思うんだけど……?
ぜったい足に負担かかってるよね?


「平気じゃないよ……!ほら、私が支えるから一緒に座れるとこ移動しよう!」
「…………」


「移動するだけだから!離れないよ!」



そう言えば渋々離れてくれる彼。
私は彼の腕を肩にまわして、ゆっくり歩く。





移動したのは病室。
そこで私たちはぎゅっと強く手を握っていた。


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