月夜に笑った悪魔 (番外編)
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「夜這いしに来た」
──午前2時過ぎ。
なかなか眠れなくて心の中で羊を数えていれば、暁はとつぜん私の病室へやってきた。
こんな夜中に病室の扉が開かれたからびっくり。
病室の扉の前には一条組の組員が見張りでついてくれているから不審者が入って来ることはないけど……本当に心臓がとまるかと思ったよ。
この世の者じゃなかったらどうしようかと……。
っていうかなんだ、“夜這い”って。
今そう言った……?
「へっ」
遅れて間抜けな声が漏れる。
「顔見たかったから来たけど、起きててよかった」
暁は私の反応を見て笑うとそばまで来てくれる。
「ちょ、ちょっと……!普通に歩いてるじゃん!松葉杖ちゃんと使いなよ!」
また松葉杖なしで歩いてる彼。
本当に骨折してるらしいからちゃんと松葉杖を使ってほしい。