月夜に笑った悪魔 (番外編)
「ちょっととまってもいい?」
どうしても花びらがほしくて彼に言えば、とまってくれる。
私は彼と手を離して、上を見上げた。
そしてまた落ちてくる花びらに手を伸ばす。
よーく狙いを定めて、手の中におさめる。
今度こそ確実にとった気でいた、のに……手をひらいてみてもなにもなかった。
……落ちてくる花びらをとるのって難しいな。
あと夜だから明るい時よりも見えづらい。
「そんなに欲しいの?」
暁は私を見て笑いながら聞いてくる。
「卒業記念にしたいの!」
「ふーん?」
興味なさそうにしつつも彼も落ちてくる花びらへと手を伸ばす。
きゅっとつかみとるようにして……
「ほら」
とれた桜の花びらを私に差し出した。