月夜に笑った悪魔 (番外編)
「暁、キスしたい」
月に照らして指輪をいろんな角度から見て、次に暁に目を向けた。
あまりにも夢みたいで、これは現実だって実感がほしかった。
見つめていれば、落ちてくる影。
そっと唇が重なり合う。
「……もっとして」
触れたのは一瞬だけ。
それだけじゃぜんぜん現実だって実感できなくてまた彼を見つめる。
「かわいすぎ」
暁は笑うと、もう一度キスを落とした。
強く押し当てられた唇。
しっかり感触が伝われば、上唇を食まれて……。
差し込まれる舌。
感じるのは熱い体温。
強く手を握って離さない。
暁を強く感じて……触れ合うたびに、現実だってやっと実感した。
それからは、2人でもう少し桜並木を歩いて……。
帰ったら、婚姻届を記入した。
婚姻届を提出するのは暁の18歳の誕生日にしよう、なんて話していたけど──提出したのは1年後。