月夜に笑った悪魔 (番外編)
広い駐車場。
岳の後ろ姿はまだ見える。
見える、けど……追いつかない。
岳の足がはやいせいと、私は現在ヒールを履いているから歩きにくいせい。
「ちょっと……!ちょっと待って!!」
その後ろ姿に声をかけるが、まったく振り向いてくれない。
ぜったい、声は聞こえているだろうに……!
なんてムカつく男。
私はショルダーバッグの中からポケットティッシュを取り出して、それを岳に向かって投げた。
岳めがけてとんでいくポケットティッシュ。
それは彼にぶつかる、かと思えば……彼はひらりと避けた。
……いったい目がいくつあるのか。
後ろに目がついているんじゃないかと思うほど。