月夜に笑った悪魔 (番外編)


私は「わかった」と返事をして、足を進めた。



緊張して出てくる手汗。
大人っぽくメイクをしたけれど、私だってすぐにバレてしまわないかという不安はある。


ぎゅっと強くつかむショルダーバッグのストラップ。









平静を装ってその男性に近づいていき、声をかけようとした時──。




「はじめまして」


視界に入ったのは、スーツに身を包んだ若い男性。
爽やかな雰囲気を纏うその男性は、明らかに私を見ている。


声をかけられたのは、確実に私。

< 56 / 382 >

この作品をシェア

pagetop