月夜に笑った悪魔 (番外編)
私は「わかった」と返事をして、足を進めた。
緊張して出てくる手汗。
大人っぽくメイクをしたけれど、私だってすぐにバレてしまわないかという不安はある。
ぎゅっと強くつかむショルダーバッグのストラップ。
平静を装ってその男性に近づいていき、声をかけようとした時──。
「はじめまして」
視界に入ったのは、スーツに身を包んだ若い男性。
爽やかな雰囲気を纏うその男性は、明らかに私を見ている。
声をかけられたのは、確実に私。