月夜に笑った悪魔 (番外編)
「え?あ、は、はじめまして……!」
無視するべきか、とも考えたがここでこの人を無視してウェイターに話しかけるのは怪しまれる。
そう思って、私はすぐに話しかけてきたその男性に向けて返したのだけど。
『そいつじゃねぇよ。ウェイターだ、ウェイター。なにナンパされてんだ』
通信機から聞こえてくる声は、恐ろしく低い声。
もちろん、私だってわかってる。
話しかけるべきはこの人ではなく、ウェイターの人。
でも、私はまちがえたわけじゃないんだってば……!
話しかけられただけで……!
ここで無視すると怪しまれるでしょうが……!!
「名前、聞いてもいいですか?」
スーツに身を包んだ男性はにこりと笑う。
その間に歩いて離れていくウェイターの男性。
私の心は焦るばかり。