月夜に笑った悪魔 (番外編)
逃がしたくない。
任務を無事に終わらせるために、絶対に逃がしたくない。
会場は広いし、ここで見失うわけには……!
「や、山田花子です……!」
本名は言えない。
だから、適当に思いついた名前を口にした。
それから。
「すみません、急いでいるので失礼します……!」
ウェイターの男性が遠くなっていくからじっとしていられず、ぺこりと下げた頭。
私はすぐに立ち去ろうと足を進めた。
けれど、パシッと手をつかまれて。
「あのっ、よければ連絡先を聞いてもいいですか!?あなたのこと、本当にきれいだって思って……!!」
反射的に後ろを振り向けば、頬を赤く染めた男性。