月夜に笑った悪魔 (番外編)
私はぱっと見上げて、岳と目を合わせる。
な、なんだ、“兄”って!
岳が兄だったら私は妹ってことになるじゃんか……!
私のほうがおねーさんなのに!
ここはどう考えても私が姉で岳が弟でしょ!
そう目で訴えるが、果たして彼に届いたのか……。
数秒間、岳と目を合わせたあと、もう一度口を開く。
「弟です!」
「こいつの兄」
またまた同時に出した声。
……私の心の声は届かなかったようだ。
「も、もう、太郎ったら~!なに冗談言ってんの!あんた背は高いけど、お姉ちゃんは私でしょ!」
軽く叩いた腕。
同時に軽く踏んずけた足。
私に合わせて、と岳の目を見るがそれはもうものすごく鋭い目つきで睨まれた。
睨まれたのはほんの一瞬だったけども。